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『砂の塔~知りすぎた隣人』第9話ネタバレ&感想その1

『砂の塔』第9話ネタバレ&感想 PART1!


第9話
前回の回想から。
クリスマスツリーの点灯式を見る健一(田中直樹)、亜紀(菅野美穂)、そら(稲垣来泉)。
それを後ろから、輪に入れず見ている和樹(佐野勇斗)。一歩歩み出ると、となりにいた弓子(松嶋菜々子)が制する。
「約束したわよね、本当のお母さんのことが知りたいから、今のお母さんを捨てるって」
「はい」
少し考えてから力強くそう答えた和樹は、家族とは逆の方向へ、背を向け、歩き出す。その後をついていく弓子。
「ママ、全部話すよ。昔、弓子となにがあったか。彼女と俺が犯した罪のことも」
イルミネーションを背に、健一が口を開く。健一の顔を見る亜紀。
ここで血だらけの浴槽シーンの回想が流れる。
浴室をシャワーで流しているところに、黒い靴下の人物がそこへ現れる。血だらけの床に子供用のクリスマス柄の小さな靴下が落ちる。その人物は健一、驚いた表情で赤ん坊を抱いている。
「和樹の母親は、もと殺人犯だ」
健一が言う。
「え?」
そこへ健一の携帯が鳴る。取り出し、表示を見ると、『着信中 阿相社長』
ちょっとごめん、と健一はその電話を取る。
「まずいことになった」
「阿相社長?僕、今ちょっと…」
「副業の件、誰になに聞かれても余計なこと言うな」
「え?」
固まる健一。そしてあの時のことを思いだす。
≪友達として手伝ってほしい事あんだよ≫
≪余計な事聞くなよ、その子にも俺にも≫
≪阿相社長に渡してくれ≫
健一は思い出していた。ニヤリと笑う阿相(津田寛治)。死んだような表情の幼い少女。空港でお金を手渡し、少女を連れて去った黒い服の怪しい男性。分厚い現金の札束。
電話が終わった後も放心状態で動かない健一。亜紀が声を掛けると、健一はもう帰ろう、とだけ答えた。
家に着き、ベッドに寝入っているそらを置く亜紀。
リビングでは健一がもう一度阿相に電話を掛ける。しかし寝室から亜紀が出てきたため、呼び出し途中だったが、慌てて切る。亜紀は不審そうに健一を見ている。
亜紀は和樹の部屋に向かい、声を掛ける。
「和樹、ただいま~、開けるよ」
しかし部屋はもぬけの殻。和樹のやつ、まだ弓子の所にいるんじゃ、と健一。
行ってみる、と亜紀。するとふいに来客を報せるチャイムが鳴り響く。
ドアホンで亜紀が対応すると、4人ほどのスーツの男性たち。
「高野健一さんはいますか?」
どちらさまですか?、と亜紀が聞くと、男たちは警察です、と答える。
「警察?」驚いて声を張り上げる亜紀。表情が強張る健一。

一斉に複数の警察たちが段ボールを抱えて勢いよく入ってくる。
「ちょ、なんなんですか、あなた達!」
突然のことに、慌てる寛子(横山めぐみ)。息子の俊介もそばにいる。
「ご主人の阿相武文さんは今どちらに?」、と警察が言う。
「仕事ですけど、」
「ご主人に逮捕状が出ています」
「逮捕状!?」
「捜索差押許可状も出てますので、家の中を捜索します」
男はそう言ってその許可証を提示する。
ドタバタと行き交う警察たちを見て、パニックに陥る寛子。
「阿相武文のことは、ご存知ですか?」
健一の前に立った警察署の男性は言った。はい、と健一。
「任意でお聞きしたい事があります。署まで来てもらえませんか?」
わかりました、と俯き答える。
驚きを隠せない亜紀。
心配する亜紀に健一は言う。
「大丈夫だ、捕まるようなことはしていない」
でも…、と亜紀。
「弓子の事件のことは、警視庁の荒又刑事を訪ねるんだ。必ず助けになってくれるから」
健一は続ける。
「子供たちのこと、頼んだ」、と。
そう言うと、健一は警察と共に行ってしまった。玄関に一人取り残される亜紀。

駅のホームを、荷物をたくさん抱えた生方(岩田剛典)が一人、歩いている。
亜紀との最後のやり取りを思い出しながら。
最終電車に乗り込んでいった。

どこかに電話を掛ける亜紀。発信履歴を見る。

『お兄ちゃん』
今日 20:58 発信
今日 20:33 発信
今日 20:08 発信
今日 19:47 発信
今日 19:32 発信

ため息をついて頭を押さえる亜紀。そこへそらの声が。パジャマ姿で寝室から出てきていた。
「パパとお兄ちゃんは~?」
もうすぐ帰って来るよ、と笑顔でそらに答える亜紀。しかしその表情は次第に曇っていく。
ここで亜紀のナレーション。
(女は時々、嘘をつく)
そらを抱きしめる亜紀。電話の台の上には、そらが作ったどんぐりの仲良し家族が並んでいる。
どこかのエスカレーターを並んで登っていく弓子と和樹。
(その場しのぎの、愚かな嘘を)
(あるいは人生をかけた決意の嘘を)
(女たちの夜は更けていく。嘘が、真実となることを祈りながら)
強くそらを抱き締める亜紀。
「大丈夫、絶対帰って来るから」
ここでドラマタイトル。

リビングで一人、座っていた亜紀に電話が着信を知らせる。
その電話は和樹からだった。安堵して表情をほころばせる亜紀。
「今、どこにいるの?」
その問いに和樹はこう答えた。
「今、札幌のホテル」、と。
「札幌?北海道ってこと?」
電話口で驚いている亜紀。弓子はホテルのフロントでサインをしている。その後ろで離れて和樹は電話をしていた。
「佐々木弓子さんと一緒にいる」
弓子は電話をしている和樹をじいっと見ている。
固まる亜紀。
「明日、俺の生まれた家に行って、本当の母親に会わせて貰う」
言葉を出せない亜紀。
「その後のことは、そっから決めるから。じゃあ」
電話を切ろうとする和樹に叫ぶ亜紀。
「待って、和樹!」
和樹はあっさりと電話を切る。うな垂れる亜紀。
最終電車を降り、改札を出ようと駅を歩いている生方の携帯が鳴る。着信の表示は『080-86…』
「もしもし」
その電話を受けた生方は、駅の道を翻していく。

翌日の朝、幼稚園バスを待っている親子の列。梨乃(堀内敬子)がママさん集団に声を掛ける。
「ねぇ、これ、もしかして寛子さんの旦那さんじゃない?」
そう言って自分の持っていたタブレットをみんなに出しだす。
そこにはニュースの記事が。

『イベント会社社長、未成年少女売買で逮捕か? やり手社長の笑顔に潜む裏の顔とは!
2916年12月2日08時05分(2016年12月2日06時24分更新)
セレブな婚活パーティーに街コンまで、さまざまなイベントを企画し、多くの男女に出逢いを運んでいるイベント会社の社長・A氏に不穏な容疑がかかっているという。
なんと、未成年の少女を海外に売りつける——人身売買の容疑がかかっているというのだ。
「何度か怪しい電話をかけているなぁと思ったことはありました。一日中、会社を留守にすることも多かったですし、突然、金額の大きなイベントを開催すると言い出すこともあり、どこから資金繰りをしているのかなぁと思っていました」(イベント会社関係者)
警察によると、11月の末に起きた別事件の捜査を行っていたところ、A氏の名前が捜査線上に浮上したという。A氏の動向を探っていくと、その先には未成年の少女との関係が深い事が判明した。
A氏はかねてより…』
、とある。そこには黒く目線をされた顔写真も載っている。

「えっ?逮捕されたの?」
「まだみたいよ」、と梨乃。
「もしかして、昨日の夜、警察が来てたのって」
他のママさん達も話し出すと、そこへ寛子と俊介がやって来る。
しー、と他のママさんが促し、その場は静まり返る。
「信じられないわ。まさかこのタワーに犯罪者が住んでたなんて」、と厳しい口調の梨乃。
ママさん全員が寛子を見ている。
子供達も全員こちらを見ている。
目を伏せる寛子。

ボイスレコーダーから千晶ちゃんの口笛のメロディーが流れてくる。
警察署での場面。
「前田千晶ちゃんの証言によると、」刑事の荒又(光石研)が話す。
「千晶ちゃんは、犯人に車で連れ去られた後、山中で迷子になり、数日間山中をさまよったか…」
「本当なんですかね?半径10キロ山狩りしてんのに、今んとこ目につく手がかりなーんにもないんですよ」、と後輩刑事の津久井(上杉柊平)。
「まぁそう焦るなよ、彼女の証言を信じるしかない。んで、この口笛は?」
ボイスレコーダーを手に持つ荒又。メガネを拭きながら津久井、「調査中です」。
でももし、犯人が自前で作った曲ってなると、と重ねて言う。
「手掛かりにはならないな」、と頭を搔く荒又。
「はい」
「荒さん、お客さん」
ふいに後ろに刑事仲間が来て、荒又にそう声を掛ける。
『幼児連続失踪事件合同捜査本部』の部屋から出てきた荒又の前に、亜紀が現れる。
「内々に聞いたんですが、ご主人は阿相武文の犯罪に巻き込まれただけ、」
二人は場所を変えて、お店のような場所でテーブルをはさみ、向かい合っている。
「今日中にでも家に戻って来れると思います」
ありがとうございます、と頭を下げる亜紀。
「しかし、まさかあなたのご主人が14年前の事件の高野健一さんだったとは」
「その事件について、教えていただけませんか」、と亜紀。
「聞いてどうするんですか?」、と荒又が聞く。
「息子を取り戻したいんです」
「取り戻す?」
「息子は今、佐々木弓子さんと一緒に暮らそうとしているんです。」
雪が降りしきる中、並んで歩いている弓子と和樹。亜紀は続ける。
「確かに私は、彼女に責められても仕方ありません。息子がいじめられている事に気付けなかった。でも彼女は、一度和樹を捨ててるんですよ。それを今更取り返そうなんて、身勝手すぎじゃないですか?」
俯いて聞いていた荒又は顔をあげて言う。
「確かに、身勝手に思えるでしょうね。何も知らなければ」
「え?」
目の前のコーヒーにミルクを入れる荒又。
「分かりました。すべてをお話します」
頭を下げる亜紀。
「彼女が殺人を犯したのは、もう14年も前のことです。」
外を歩いていた弓子は足を止める。和樹をじっと見ている。
ここがあなたの生まれた家よ、と弓子は言う。
「事件現場となったのは、佐々木弓子と高野健一さんが暮らしていた北海道の自宅」
その家を見上げている和樹。
「その頃、たまたま研修で北海道警にいた私がこの事件を担当しました。弓子はもともとこちらの生まれです。弓子の母親は厳格というよりも過干渉といいますか、今でいう毒親みたいなもんです」
頷きながら聞く亜紀。
「で、彼女は高校時代、家を飛び出し、アルバイトで自活しながら都内の大学に通った。だが、そこで出会った恋人の健一さんには何のアルバイトかは言えなかったそうです」
「どうしてですか?」、と亜紀。
「ホステスをしてたんです。まぁ、結婚を機に辞めたようですがね」
ごくりと唾をのむ亜紀。
「しかし、客の一人に質の悪い男がいて、辞めてからもしつこく言い寄ってきたらしい。今でいうストーカーです」
その家の中に入っていく弓子。後をついて行く和樹。

ここで14年前の回想シーンに切り替わる。
≪雪降って来たねぇ、寒いねぇ≫
若かりし頃の弓子は、雪の中、幼い和樹を乗せたベビーカーを押しながら家までの道を歩いていた。荒又は続ける。
「やがて和樹くんが生まれ、弓子は健一さんの赴任先の北海道に移り住みました。しかしそこにもストーカーはついてきた」
家のポストから手紙を出す弓子。その中に、赤い文字で『君は俺からは逃げられない』、と書かれた手紙が。
「弓子は健一さんには相談できずに、警察に通報した」
手紙を持ったまま立ち尽くす弓子を外からじっと見ているひとりの男性。
「だが、当時はまだ法律も整ってなかった。我々警察がもたもたしている間に」
家でクリスマスの飾りつけをしている若かりし頃の弓子。KAZUKIと刺繍された小さな靴下を手にしている。
「クリスマスイブの夕方、ついに事件は起きたんです」
玄関の音がした。振り返り、笑顔になる弓子。
「ご主人が和樹くんを連れて、散歩に出掛けている隙を狙って」
しかし、そこにいたのは、ストーカーの男性だった。
≪逃げられないっつってんだろ≫
後ずさりする弓子。男は手に包丁を握っていた。
「男は自宅に押し入り、彼女に襲い掛かった」
振り上げた包丁。床に置いてあったKAZUKIと刺繍された靴下に血が飛び散る。
逃げる弓子。
≪お前を殺したあと、子供も殺す≫
男はそう言った。場所は風呂場までもつれ込み、逃げ場を失った弓子。相手の包丁の柄を掴んだ弓子。二人で倒れ込み、ふと男が包丁を手から落とす。それに気付く弓子。
「お前を殺した後は子供も殺す、男はそう叫んだそうです」
落ちている包丁を手に取る弓子。弓子は倒れている男に、掴んだその包丁を叫びながら大きく振り下ろした。血が飛び散り、赤く染まっているお風呂場。倒れて動かない男。血だらけで立ち尽くす弓子。
「おかしなもんで、その時彼女の頭の中にはこんなことしかなかった」
弓子は男を風呂場から引きずり始める。
「和樹がもうすぐ帰ってくる。あの子に怖い思いをさせちゃいけない」
神妙な表情で聞き入る亜紀。
「彼女はただそれだけのために遺体を裏庭に運び出し、必死で風呂場を磨いた」
お風呂場の窓を開けて、浴槽を掃除する弓子。
赤いお風呂場。その向こう側に驚いた顔で立っている健一。
気付く弓子。健一の胸には抱っこされている和樹。涙が止まらない弓子。
「裁判では正当防衛が主張されましたが、下された判決は過剰防衛による殺人罪。懲役2年の実刑判決」
≪離婚!?≫
弓子に面会に来ていた若かりし頃の健一がそう声を上げる。
≪お願いします≫
ガラスの向こうで頭を下げる弓子。
≪なに言ってんだよ、別れる必要なんてないだろ?≫
≪あの子を殺人犯の息子にしたくない≫
俯いた弓子は続ける。
≪和樹の将来を奪うわけにはいかない≫
「弓子の決意は固く、健一さんも折れるしかなかった。勿論彼女のやったことは犯罪、人殺しです。でもあのままだといつストーカーが和樹くんに危害を加えてもおかしくなかった」
荒又は言う。
「つまり、弓子は自分の人生を捨ててまでも和樹くんを守った、とも言えます」
あ、すいません、と微笑む荒又。
実は私も息子を亡くしてまして、つい彼女の肩を持ちたくなってしまう、と。

家の中に入り、窓のブラインドをあげる弓子。
覚えてないわよね、と和樹に声を掛ける。あなたがここに居たのは1歳の時だから、と。
部屋の中を見渡している和樹。
「佐々木さんは母とは古い友人なんですよね?」
「えぇ」
「なぜ母は、今となって僕と会う気になったんでしょうか」
「今までは迷ってたんですって」、と弓子は話す。
「あなたを手放した理由を話したら、あなたの負担になるかもしれないから」
「負担?」弓子を見る和樹。
「でも彼女、決めたんですって。あなたならきっと、事実を受け入れられるはずだから、って」
驚いて和樹が言う。
「母は、ぼくをしってるんですか?」
「遠くから見守ってたのよ」、と弓子は笑顔を見せて話す。
一歩、歩み出る和樹。「母に会わせて下さい」
「いいわ。でもその前に約束して欲しい事があるの」
「約束?」
「亜紀さんとは二度と会わない、って。約束できる?」
その言葉に目を見開く和樹。

幼稚園バスのお迎えが終わり、マンションの中に入ってくる亜紀と幼稚園服のそら(稲垣来泉)。
荒又とのやり取りを思い出し、浮かない表情の亜紀。
そらが走り出す。「あ!おばあちゃんだ!」
亜紀が目をやると、久美子(烏丸せつこ)の姿が。
「退院したら連絡位よこしなよ」、と久美子。暗い表情の亜紀。何かを感じ取る久美子。
部屋の中。リビングのソファーではそらがお昼寝をしている。
「ふ~ん、そんな事件があったんだ」、とテーブルに向かい合って、久美子が言う。
「あんたさ、その弓子さんって人のこと、だんだん憎めなくなってきてんじゃないの?」
考えをめぐらす亜紀。
「もし、和樹の幸せを思うなら、いったんその人に預けてみるって手もあるよね」
「和樹を手放せってこと?」
「今だから言うけどさ、」、とケーキを食べていたフォークを置く久美子。
「あんたを置いて家を出てって時、男と逃げたってのは嘘なんだよ」
唖然としている亜紀。
「そういう事にしておかないと、残されたあんたも踏ん切りがつかないと思ってさ」
「嘘でしょ!?」
「でもさ、あの後、借金取りに追われて散々な目に遭って、やっぱりあんたを巻き込まなくて良かったと思った。離れて暮らして正解だって思った」
目線を下に落とす亜紀。
「一緒に暮らすだけが正解じゃないと思う。何が一番和樹の幸せになるか、よ~く考えて、答えを出してやんな」
顔を歪ませる亜紀。

「この学校はね、自由な校風で有名なの」
『札幌学園高等学校』2017年度 学校案内
和樹が手にしているのは高校のパンフレット。弓子はソファーに座っている和樹にそれを差し出す。
「写真学科もあるわ」、と。
「写真学科?僕も通えるんですか?」
「もちろん。どう?ここで新しい人生をやり直すの」
嬉しそうな明るい表情でそのパンフレットを見ている和樹。
「今までの悲しい出来事はすべて忘れて、新しいあなたに生まれ変わるのよ」
和樹が弓子を見る。微笑む弓子。
「あなたが生まれ育つはずだった、この場所で」
明るい表情で家を見渡す和樹。しかしふと表情が曇る。和樹を見ている弓子。
「あの、でも、さっきの話本当ですか?これきり東京の家族に会ってはいけないって」
「本当のお母さんに会いたいんでしょう?」、と弓子。
少し考えてから、会いたいです、と答える和樹。
「彼女もそれなりの覚悟ですべてを話そうと思ってる。あなたも同じ覚悟がないと」
「分かりました」
微笑んで頷く弓子。

「すまん、やっと今、解放されて」
警察署の公衆電話から電話をしている健一。
「北海道って…」

家に帰ってきた健一が顔を歪ませる。
「向こうで暮らすって言ったきり、連絡がつかなくて」、と亜紀。
「これは誘拐だぞ」、と健一。
警察に、と電話を取ろうとすると、慌てて亜紀がそれを止める。
和樹が自分で行ったのよ、誘拐じゃない、と頭を振る亜紀。
なに言ってんだ、弓子がうまい事言いくるめたに決まってんじゃないかよ!と感情的になる健一。
「あの女は、目的のためなら何でもやるぞ」
「でも、和樹を思う気持ちに嘘はないでしょ?」
「どうしたんだよ、亜紀ちゃん」
眉間にシワを寄せて、亜紀に迫る健一。亜紀が言い淀むようにしていると、家の電話が鳴る。
「もしもし、和樹?」
電話の向こうの人物は静かに言った。
「佐々木です」

CM
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「もしもし和樹?」
「佐々木です」
驚く亜紀。
「…弓子、さん」
その瞬間、健一が受話器を奪い取り、声を張る。
「なに考えてんだよ、お前は!」
「ご報告があって電話しました」
弓子は札幌のホテルのロビーから電話をかけている。ロビーのソファーに和樹は座っている。
「和樹くんはこちらでお母さんと暮らすことを決めました」
受話器に耳を当て、一緒に聞いている亜紀。
「何だって?」、とこぼす健一。
「あした、カメラや荷物を取りにそちらに伺うそうです。でも、これが最後」
弓子は振り返って、そうよね?、と和樹に言う。
ソファーに座っていた和樹は、静かにうなずく。
「それじゃあ」
「おい待て!」
健一の声もむなしく、電話は切られてしまう。怒りの仕草で受話器を置く。
「帰ってきたら、縄で縛り付けてでも、引き止めるぞ」
呆然としている亜紀。
「そんなこと出来る訳ないじゃない」
「いや、ママは悔しくないのかよ!」健一が興奮して言う。
「悔しいよ!」
涙をためて亜紀が叫ぶ。
「悔しいに決まってるじゃない。でもあの子はもう高校1年生なんだよ。あの子なりの考えもあるだろうし。とにかく一度、ちゃんと話を聞いてみよう」
怒りが収まらない健一。
「和樹が幸せでいてくれることが一番大事なんだから。」

警察署の階段を急いで駆け下りていく津久井。
「荒又さん、口笛の曲が分かりました」
荒又の隣に座る。
「10年前に音楽著作権協会に登録された曲で、この人が作曲した人です」
そう言って資料を出す。その資料には、

『新たな認知症音楽治療法を研究しています!
音楽音響医学
小峰昭宏教授
認知症医療学研究科
音楽療法専攻
修士過程/博士課程
連絡先 MAIL:komine@univ.co.jp

この分野の研究テーマ
・音楽と認知症の新たな治療方法
・医療の現場における補完代替医療
・カウンセリングとしての音楽療方法』

と、ある。それを読む荒又、「大学病院の教授?」

空港の場面、和樹と向かい合った弓子が言う。
「明日の1時に、ここで待ってる。最後のご挨拶しっかりして来なさい」
弓子の言葉にしっかりと頷く和樹。
エスカレーターに乗った和樹はもう一度、弓子に振り返り、笑顔でお辞儀をする。
それを受けて微笑む弓子。

「認知症の音楽療法というのはご存知ですか?」
メトロノームが鳴り響く部屋、小峰教授は話す。
「認知症患者に音楽を聞かせたり、実際に演奏してもらうことで、症状の改善を促すリハビリテーションです」
メトロノームを留め、そう説明する。黙って話を聞いている荒又と津久井。
「その効果を最大限に高め、かつ誰でも演奏しやすいような曲をと実験的に作ってみたのがこの曲です。」
荒又が持ってきたボイスレコーダーから千晶ちゃんの口笛が部屋中に流れる。
「その音楽療法にはこれまで何人くらいの方が?」、と津久井。
「まだ実験段階ですので、おそらく100人も行かない程度です」
教授は答える。
その時、何人かの子供たちが遊んでいる後ろに、歩いている黒づくめの人物が映る。黒い洋服のフードを深くかぶっている。そしてその人物は遊んでいる子供たちのあとをついて来ている。
「その患者さんと関係者のリストを全部貰えますか」、と荒又。
マンションのロビーで走ってはしゃいでいる子供たちに声を掛けるママさん達。それはいつものお決まりの梨乃(堀内敬子)たちメンバーだった。
「気を付けてよ~」
「さ、行こう」
みんなが階段を上がっていくと、そのフードの人物も後ろから階段を上がっていく。

足を止める和樹。2502の部屋の前。
玄関に和樹の姿が見えるとそらが大きな声を出して、和樹に飛びつく。
「おにいちゃ~ん!」
無表情の和樹にそらが言う。これからみんなでキャンプに行くんだよ、と。
「えっ?」
驚いて足早にリビングに行く和樹。
「お兄ちゃんお帰り~!ねぇ、見て見て、パパ、すっごい張り切っちゃって」
そう言いながら亜紀も鞄に荷物を詰めている。
「会社は?」
健一を見る和樹。
「仕事なんてしてる場合じゃないよ、息子が帰って来てくれたんだから」
そう言って楽しそうに笑っている健一と亜紀。
「俺は、荷物、取りに来ただけで」、と俯く和樹。
「わかってる、無理矢理説得しようなんて思ってないから。せっかくだし、今日はみんなで楽しい思い出つくろ!」
亜紀がそう笑い掛ける。

『砂の塔』ネタバレ&感想その2につづく